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最大の (桐蔭ー東福岡)

 恥ずかしながらキャプテン翼世代である。



 なので、数々の名台詞は体に染み付いていたりするのが複雑な気分だが、その中で「攻撃は最大の防御」というのがある…(別に高橋陽一のオリジナルではないのだろうが、広まったのは漫画のせいだろう)。
 今日の東福岡はそれを地で行く展開。

 開始早々、桐蔭があっさりとモールでトライを取る。ゴールも成功。立て続けにSOがDGでど真ん中を打ち抜く。先手必勝。会場はどよめいた。ここまで5分とかからない。
 そこに、東福岡の雰囲気が「もしかして桐蔭がこのまま、勝利を掻っ攫って走りぬく、ということがあるかも…」と観客に思わせるのに拍車をかける。ボールを持つと「絶対いつでもトライは取れる」と自信が漲っているのが分かるのだが、実際には、個々がそれぞれに行こうとするので攻撃にリズムが出ない。桐蔭のタックルがやや高いのに助けられてゲインするものの、トライには中々結びつかない。ここから20分の間ゲームは膠着。桐蔭がDFからリズムを作る試合展開に持ち込むかに思われた。
 しかし、そこは東福岡、レギュラーは大幅に入れ替わってもチームの背骨に、去年の「超攻撃的ラグビー」のDNAを受け継ぐチームである。23分、30分といずれも桐蔭のミスからBKが走る。2T1Gを挙げ、12-10と逆転して前半を終える。桐蔭はなんとか追加点を挙げて止めを刺したいところで、仕上げの部分がうまくいかなかった。

 それでも今年の桐蔭は特に粘り強いチーム。後半どのように縺れるかをあれこれ考えてはみたのだが…蓋を開けてみれば後半は東福岡の独壇場。前半から実は現れていたのが、ボールを持った時の東福岡の個人技(敢えて個人技と言う)を、桐蔭の組織DFが止められないという兆候。結果的に相手の反則を誘ったとしても、一次DFのところでは少しずつ差し込まれて結果的にゲインを許している。止めることができた地点はかなり自陣深く食い込まれていた。

 後半もボールを持つと東福岡BK陣は迷わずに走る。あの、人と人の間を見事にくぐり抜け、しかもライン際をしっかりと走り抜く才能は何処から来るのだろう。思わずロアマヌ(もしくはイオンギ。いずれも埼工大)の高校時代の走りを思い出してしまった。ライン際を強い足腰で走られるとDFは片側からしか出られないので、タックルが間に合わない。分かっていても止められない。
 ただ、一方的なペースだった割に後半東福岡が加えた得点は2T2G1PGだけだった(だけだった、と思わず書いてしまう)というのは、桐蔭の激しく前に出るDF(ただ、それも後半20分過ぎにはやはり足が止まりだした)がそれなりに機能していたということだろう。
 後半桐蔭はボールを持ってもなかなか前に出られなかった。攻撃の最後の地点が詰められていなかったのが惜しまれる。取り切れた東福岡に対し、最後ボールを手放さざるを得ないことが多かった桐蔭。やはり「攻められないと守れない」のだ。

 「こんなに差があるんだ…」と思わず呟いてしまった東福岡の強さ。春に見せた雑さの欠片はないこともないけれど、それ以上に、圧倒的なスピードと走るコースへの嗅覚。最後絶対にこれで仕留める、という技を絞って磨きあげたりすれば、止められるチームはないのではないか(そこを絞らないのが東福岡だといえば、そういうことなのであるらしいのだが)。勝利への貪欲さも際立っている。そして何より楽しそう。さすが東福岡。今年の決勝はどういう名勝負を見せてくれるのだろうか。

 春の選抜、桐蔭が東福岡を破って決勝に進出した際、「花園の決勝は東福岡ー伏見工」と予想していた。東福岡の潜在能力が一番であるように思えたので。伏見のきちんと仕込まれたラグビー対ヒガシの素材で勝負ラグビー、力も二つが抜けるだろうと。
 しかし、桐蔭が志高くチームを作り上げてきた日々がなかったなら、今年の高校ラグビーシーンはもっと盛り上がりを欠くものになっていただろう。スター性も話題性も抜群のキャプテン仲宗根はじめ、もう少し選手たちの活躍を見たかったが、また新しい桐蔭、そして三年生たちの新しいステージでの活躍を楽しみにしたい。14日にはもう、神奈川県の新人戦だ…。
 
by kefurug | 2008-01-05 23:46 | 高校ラグビー

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