ボールを運ぶ (天理@2008 花園)

 伝統の白いジャージが泣き崩れる。



 どれほど素晴らしい試合でも、敗者は生まれる。
 あまりにも美しかった天理の攻撃。しかし、それを2トライに防ぎきった長崎北陽台の堅守。見ている者としては心引き千切られるノーサイド。ゴールキックの差だけで勝敗は決した。天理敗れる。

 対国学院久我山戦。
 素晴らしいバックス攻撃を何度も見せる天理。力で抜くのではなく、パスのコースと、受け手がコースに入るタイミングで相手をずらす。隙間を作る。抜ける。必ずラインがついていっているので、後はうまく引き寄せるだけで相手を置き去りにすることが出来る。美しいトライが重なる。
 これは春の選抜での伏見工業だ。奇しくも相手は同じ国学院久我山。相手に当たってボールを停滞させることなく、抜く。敵を引き付けて外の味方に回す。WTBが走りきる。
 そしてその美しいラグビーは、伏見では失われ、天理で育てられていた。
 どうしてこのチームが決勝の舞台に立てなかったのだろう。どうして準々決勝の相手は、よりによって長崎北陽台だったのだろう。ラグビーの神様も、運命の神様も、やはり時々悪戯したくなるのだろうか。

 13番、八役のタックルに兄・大治の姿が重なる。三年前の花園、準優勝を飾った天理フィフティーンの中で、間違いなく一番輝いていた選手が八役大治だ。
 ハイライトは準決勝の大工大高戦、後半のロスタイム。得点は天理19-8大工大高。時間を考えると試合の帰趨はほぼ決しているが、意地のトライを手繰り寄せるべく必死に自陣から攻撃を試みる大工大高の選手たち。ボールがFBに渡った瞬間に外から稲妻のような八役のタックルが相手を地面に叩きつける。と、息つく間も無くそのままボールを拾い上げて八役がトライ。対戦校の息の根を止めた。月日が経っても、あの衝撃のタックルは決して忘れられない(余談だが、中央大学の山下弘資のタックルはあれを髣髴とさせるところがある。目指せリーグ戦のタックル王…話逸れてすみません)。
 あの年の天理は、ライン攻撃は今年ほど見事ではなかったが、八役に代表される堅守と、まとまって機動力のあるフォワードで決勝まで勝ちあがった。そして、四連覇に挑んだ啓光に敗れた。

 今年のチーム、いろいろなことが絡み合ってこれほど見事な戦いを見せたわけだが、中でも重要なのはおそらく、立川がセンターになったこと、そのことで立川のパスの質が変わったことだろう。
 春の選抜では、キックやタックルはよかったが、パスが浅かったり、パスダミーが無駄に多かったりで、展開しようとする意志が空回りだった。CTB12にコンバートされ、より外側でボールを持つことになったために選択肢が増えた。パスダミーも効果的。彼の作り出す「間」によって天理のバックス陣は自在にディフェンス網を抜いていく。「筑波大か?」と思わせるような効果的なキックパスも披露。簡単に使うには抵抗があるが、それでも井上とのダブルSO効果は「魔術師」とでも呼びたい。

 それほど見事なチームが準々決勝で終わらなければならない。北陽台戦でも、チャンスはもっとあった。活かしきれていれば…。しかし、冒頭にも書いたとおりそれをさせなかった北陽台の見事さを称えなければなるまい。
 何かを恨みたくなる。このチームを、もっともっと見てみたかった。どうしてもそれだけが残念だ。
 

 付記1
 対長崎北陽台戦、後半最後の大切なところでキャプテン立川は交代した。彼がいなくなることの意味は全員が理解していたはず。それでも立川が素直に交代したところに彼のぎりぎりの状態が現れているような気がする。(舞踊の方の)バレエの王子様を思わせるほどのテーピングで全身を鎧って戦ったキャプテン。彼も春からテーピングが外れたことがなかった。今は、とにかく体が普通の状態に戻ることを、祈っています。

 付記2
 こうして思い出すと、八役大治は宝だったのに、大学行ってからどうなんでしょう…。去年全四大戦で見た時は、特に目立たなかった。いよいよ大学での最終学年、悔いがないように戦ってほしい。
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by kefurug | 2008-01-25 16:15 | 高校ラグビー

とりあえず、非常に個人的な思いを書き綴ります。


by kefurug