戦犯とMVP

 国定周央という選手が気になっていた。



 そんなの当然だと思われる方も多いだろう。大会に入ってからのトライ数こそ少ないが、この大会で啓光のトライを生み出す起点としてどれだけ彼が働いていたかを考えれば彼が優秀な選手なのは明白だ。
 大阪府予選決勝を見れば一人で3トライ。押しも押されもせぬエース。


 しかし、私にとって、彼が優れているから気になるのではなかった。
 夏の菅平、高校日本代表での「駄目な」姿が頭から離れなかったからだ。彼は、タックルが出来ない。
 U18フランス代表相手に、チームがなす術もない大敗だったのは一人の責任でないのはもちろんだが、あの日の彼からはディフェンスにおいて「勇気」を全く感じられなかった。観戦メモの最後にこうある。「何で14を出すのか分からない 全然体張れない」
  

 同じ試合、大敗の中タックルで目を引いたのは7番の後藤。後藤友哉、啓光の7番である。MVPをあげるなら彼しかいないと個人的には思っていた。彼のタックルが無かったら試合はどれだけ悲惨なことになっていたか分からない。


 この、U18フランス代表来日シリーズを見た際の記事(読み返すと相変わらず拙い記事で冷や汗が出るが)で、「殊勲者とA級戦犯とが同じチームに所属しているのが興味深い」と書いた、その二人が上記の二人である(リアルタイムでは、個人名を挙げるのはどうかと私なりに思うところもあったので敢て名前は出さなかった)。
 
 二人が共に啓光の選手であることに気づくと、逆に「啓光」というチームへの興味は深まった。
 国定がタックルが出来ないなどということは、春の選抜では全く目立たなかった。しかし、高校日本代表という、チームとしてまとまっていないところに放り込まれるとあからさまに欠点がさらされる。啓光という「チーム」が国定の欠点を目立たせず、彼にふさわしい仕事をさせているのだということが分かる。それが出来ているという事は、周りの選手もそれを納得して戦えているということだ。
 そういう風にチームを作れるのは杉本監督の手腕なのだろうか。そうであれば花園予選で、あるいは花園本番で、真価を見ることも出来るだろうと楽しみだった。


 結局、府予選決勝も、花園での試合も(見られなかった東京戦は分からないが)、国定がディフェンスが出来ないという事が目立つ場面はなかった(実は決勝で多少馬脚を現している部分もあるのだが、逆に「タックルしている!」とちょっと驚かせてくれてた場面もある)。チームは彼の光の部分だけを見せることに成功している。後藤を始め、宣原、伊田、そしてFW全員が「勇気」なんて言葉すら浮かばないほど楽しげにタックルを決め、BKもフロントスリーがきっちり相手を止める。エースは守られる。
 それは取りも直さず啓光というチームの力と余裕を感じさせる光景である。
 ああ、啓光は本当に強かったんだなあと実感した日々だった。


 呪縛が解けてのびのびと戦った啓光、笑顔の戴冠。
 甦った王者は強かった。  
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by kefurug | 2009-01-07 23:48 | 高校ラグビー

とりあえず、非常に個人的な思いを書き綴ります。


by kefurug