不断 (選抜 準々決勝)
2009年 04月 05日
プログラムを眺める作業も、実は奥が深い?!
天候もスタンドに座っている分には穏やか、もう移動しなくてもいい準々決勝まできてやっとゆっくり眺める余裕が出てくる。常翔のフロントローの体格を改めて確認すると、1番山内君、180㎝・90㎏、2番勝木君、172cmだけど102㎏、3番の西池君はなんと!185㎝140㎏である。
失礼しました。
これこそ「大きく育てましょう」の筆頭に来るべきか。見落としとは恐ろしい。
そして、それを見ている際に気づいたのである。仰星は、プログラムによると5番中村君が190㎝、19番泉森君が193㎝(しかも、プログラムに拠れば、110㎏)であることに。これに準々決勝になるまで気づかないまま前回の記事を書いてしまい、反省している。
せめて、準々決勝で気づけてよかった。
第一試合 常翔学園ー大分舞鶴
勝敗は一瞬にして決していた。
試合の幕を開けた常翔のノーホイッスルトライは、特別なことは何もせずに、FWでポイントを作りボールを回した結果あっさりとスペースが空きインゴールを陥れたものであったことが、力の差を歴然と示していた。その後も、奔流のような常翔の攻撃に押し流される大分舞鶴フィフティーン。防御において全く覇気が見られず、ラックを連取されるとあっという間に人数が足りなくなり、タックルに、一応いっているのに振り解かれてはあっさりトライを献上する。高く、どこか腰の引けたタックルである。
3分、12分、16分、21分と常翔がトライを重ね、29-0まで点差が開く。終了間際29分、大分舞鶴は常翔のペナルティを起点に何とかFWで取りきり辛うじて5点を返し、5-29としたところで前半終了。
後半、またもや常翔がノーホイッスルトライを挙げて突き放しにかかる。4分、大分舞鶴はFWで近場を攻めてトライ、ゴールも決まり何とか10-34とするが、7分、12分と常翔が自在に走り、止めを刺す。46-12。
更に常翔の攻撃は続く。しかし、相手のタックルの甘さに味を占めたのか、「そこできちんとパスを放ればトライになる」というところで個々の選手が勝手に突っ込むようになる。当然試合は停滞、ラックに巻き込まれた選手は孤立しがちなので、ターンオーバーを許したりノットリリースの反則を犯すことになる。トライチャンスは何度も訪れたが悉く潰れた。得点が動かないまま時間が過ぎる。
24分、漸く常翔がトライを挙げ、53-12。残り時間は少ない。大分舞鶴が相手キックをキャッチしたところから攻め込み、大きなチャンスを迎えたが、パスが悪すぎて通らず、ターンオーバー。結局そこからカウンターで常翔が攻め上がり駄目押しのトライを挙げ、61-12で試合は終了した。
正直なところ、大分舞鶴は予選リーグの組み合わせに恵まれてこの場に立ったように見えていた。予想通りの試合展開に、納得と失望が半々。残念ながら「情けない敗戦」としか言えない。
常翔は、予選リーグよりも伸び伸びと戦っているように見え、FWの接点の強さも、BK個々の速さも見せてくれたのだが、後半中盤一気に試合運びが雑になったのはいただけない。見ている立場としては「その程度のチームでしかないのか」と思ってしまう。覇を唱えるつもりのチームであるなら、もう少し違った戦いを見せてほしかったというのが本音だ。残念だった。10本中成功が4本というコンバージョンの成功率の低さも気になった。
FW陣は激しくファイとしていたが、目立っていたのは15番の中林選手。スピードと強さを兼ね備え、積極的に突っ込んでいく非常に強気なタイプ。魅力的にも見えるが、相手のディフェンスを破れない時どうするかを考えると評価は難しいタイプかもしれない。
第二試合 御所実業ー桐蔭学園
準々決勝の中で最も力の近接したカードである。そのことを当事者も観客も理解しているからだろうか、試合前にはかなり強い緊張感が漂った。試合が始まってもそれは続いた。御所が攻めれば桐蔭が激しいタックルを見舞う。桐蔭がスクラムをターンオーバーし攻めれば、御所はタックラーだけでなく二人目三人目が一気に群がり防御し、簡単にはゲインを許さない。
桐蔭は二度目のスクラムターンオーバーから相手ゴール前に攻め込んだところで御所がオフサイドを犯す。ここで、桐蔭はスクラムを選択するが、球が出たところでノックオン。
それでも相手キックをキャッチしたところから再び攻める桐蔭だったが、ゴール前で10の短いノールックパスを御所が見事にインターセプト(はっきり見えなかったが10か?)、受けた7はゲインしながら捉まる寸前キック、一気に御所が攻勢となる。20分、相手キックをキャッチしたところから御所15が走りこむ。タックルに行こうとする桐蔭の選手同士が交錯してしまい、穴が開いたところで受けた12がトライを決め、5-0とする。
キックオフ後、再び攻め込む桐蔭だったが、ゴールを目前にしてノットリリースザボールで逸機。終了間際、御所はPGを狙うが外れ、5-0で前半を折り返した。
後半、桐蔭10のパスを御所4(か?)が再びインターセプト、一気にゲインし受けた13がトライ。ゴールは決まらず10-0となる。ノーホイッスルトライである。出鼻を挫かれた桐蔭は完全に波に乗り遅れる。
個人的に、この両者は雰囲気が似ているチームだと感じていた。活き活きとディフェンスをし、ディフェンスからリズムを作る。だから、攻めさせられ、しかも取り切れないとペースが乱れる。この日、攻めさせられたのは桐蔭の方で、その分点差はそれほど開かなくとも、試合の主導権を握っているのは御所であるように見えた。
御所は、攻めてもラックで二人、三人と固まって後ろから素早くサポート。ボールをしっかりキープしながら時間、陣地を有効に使う。ラックの先頭で低く構え、前を見据える選手たちの姿は一昨年の長崎北陽台を思わせ、何となく胸が熱くなる。
桐蔭はチャージを起点に御所ゴール前に攻め込む。御所がペナルティ、ラインアウトからギャップを突いて6が抜けてトライ、ゴールも決まり、何とか7-10の3点差に持ち込む。残り時間は10分を切っている。
桐蔭が攻める。しかし、ミスやペナルティでどうしてもトライには結びつかない。ロスタイムはやや長い4分、桐蔭ボールのスクラムからボールが出たところで、ここまで破綻しなかった御所のBKのラインディフェンスに穴が開いた。突っ込めばチャンスだったが桐蔭は前に出たディフェンスに対して下がってしまい、ギャップを突くことは出来ず、チャンスは潰えた。時間切れで、御所が逃げ切った。
桐蔭も決して大きいチームではないと思うのだが、今年も御所は本当に小さい。しかし、足腰は御所の方が強いのではないかと見ていて感じた。やはり小さいチームがするべきことをきちんとしているのだ。
ちょっと聞いた話によると、今年の御所は高校でラグビーを始めた選手が多く、CTBのどちらかの選手もそうだとのことだったが、どちらだったとしても、二人ともとてもそうとは思えないほど素晴らしいタックルを連発、あのタックルだけでこの一日の元はとれたように思う。去年の選抜、花園、そしてこの選抜と、大きな舞台を連続して踏むことでチームとしての蓄積も一気に全国上位レベルのものへと変わってきているのだろう。しかし、天理との差が開いているというわけでは無さそうだから、今年も奈良県の争いは面白いのではないだろうか。
関東王者には残ってほしいと願っていたが、激しいディフェンスの前に桐蔭は敗れ去った。もしかしたら、関東大会でうまく行き過ぎたのかもしれない。予選リーグでも競った試合がなかったために力が伸び切れなかった部分もあるのだろうか。守備はともかく、攻撃においてミスが多すぎた。どこで勝負したいのかが見えてこず、インターセプトを許すなど隙も多かった。チームはこの経験をどう消化するのだろうか。
第三試合 東海大仰星ー長崎南山
「啓光を倒した」という看板を背負うことになった南山が、近畿3位の仰星にどう戦うことが出来るのか。この試合を非常に楽しみにしていた観客は多いだろうし、私もその一人だった。
開始2分、仰星はラックでのターンオーバーから、SOがギャップをついて抜けてトライ。ゴールは失敗したが、呆気ない先制トライで、スタンドに僅かに白けた空気が漂う。ターンオーバーからとはいえ、あっさりと取られすぎではないかという思いが萌すのだ。
仰星は勢いよく前に出続け、4分、再びターンオーバーからトライを挙げる。
差し込まれながらも南山が少しずつ自分のペースを取り戻そうとする。粘り強くタックルし、接点でのターンオーバーなども出てくるのだが、いざボールを持ったところでミスが頻発し、流れを摑むことが出来ない。13分、16分と仰星が再びトライを追加、24-0まで差は広がる。
「全国大会で勝たなければならない」という重圧の下、仰星はもっとぎこちない攻撃を見せるかと予想していたが、力を素直に出すことが出来ている印象を受ける。とにかく仰星が攻撃でも防御でも前へスピードに乗って出て行き続ける。辛うじて防ぐ南山。
26分、仰星のダイレクトタッチからのラインアウトで漸く仰星陣22mまで入った長崎南山は、ラインアウトから素早くBKに展開。抜け出した10が12につないでトライを挙げる。ゴールも決まり、7-24として何とか後半に一縷の望みをつないだ。
後半、開始早々、南山が何とか流れを手繰り寄せようと立ち向かうが、3分、南山のキックをキャッチしたところから仰星14が自陣10m付近から一気に走り切りトライを奪う。仰星の勢いは衰えない。接点での激しさで南山を上回り、圧力を受けた南山はハンドリングミスを多発。ボールを手に入れ攻めようとしても、ミスやペナルティで結局手放すことになる。12分、19分に仰星がトライ。このキックオフから仰星が更に1トライを重ねた場面は、南山がもうディフェンスに行けなかった。50-7。この後、南山はキックパスで14がトライを挙げ、14-50とするものの、32分、仰星が55-14と止めを刺し、試合は終わった。
この日、南山は堅守が機能しなかった。スクラム、ラックなどから仰星SOがボールを持ったところから一気にトライを奪われる場面が繰り返され、試合中に修正されることはなかった。チャンネル1のところのディフェンスを受け持つ存在がおらずSOに自在なゲインを許していた。ラックでしばしばターンオーバーを果たせるのだが、それがトライへ結びつくまでには道程が遠すぎた。仰星と自分たちの力関係をどのように計り、どう戦うつもりだったのか、それが実行できなかったのはどうしてなのか、ちょっと聞いてみたいようにも思う。もう少し接線になるかと思ったのに残念だ。
仰星は非常に勢いがあった。ボールを持ったら素早く展開、ペナルティからでも素早く仕掛けて相手に構える余裕を与えなかった。これがどんな相手にも出来るようなら楽しみなチームだと感じた。
10の水野が目立っていたが、13、14の畑中ツインズもかなり活躍。横山ツインズに続いてラグビー界を沸かせられるか楽しみである。
ちなみにこの日の仰星のLOは冒頭に述べた190㎝ツインタワー。羨ましい(←誰の視点?!)。
第四試合 東福岡ー尾道
東福岡のキックでゲームは始まった。
激しくタックル、ラックでターンオーバー、そして10の効果的なキックで尾道が敵陣に入る。6分、ペナルティをもらったところでPGを選択、これを10が決め3-0と尾道が先制を果たした。
東福岡は攻め込む。尾道は、ボールを得た時にミスが出て攻勢には移れないが、接点、ディフェンスでは全力で抵抗し、何とか防御し続ける。東福岡が遂にゴールを割ったのは17分、ラインアウトから展開したボールを受けた12がディフェンスを突き破ってのトライだった。東福岡は、20分、PGで3点を追加。更に23分、尾道のペナルティからラインアウトを起点にトライを奪う。26分にも1トライを追加し、24-3として前半終了。
後半、尾道も素晴らしいタックルを見せるのだがそれでも攻め続ける東福岡は7分、10がラックから出たボールを受け走り切りトライ。
相手キックを受ければボールを持つ機会はくるのだが、速いプレッシャーを受け、前半は五分に渡り合っていた接点でも体力が奪われてくる後半にはターンオーバーを許すようになると、攻めても攻めても得点が取り切れないという状況に陥る尾道である。13分、ターンオーバーから東福岡はトライを追加、更に、この後何とか東福岡ゴール前に迫った尾道の攻撃をしのぎきると、ターンオーバーから一気に3がゲイン、これが起点となって20分にはまたトライに結びつく。41-3。
この時インゴールで小競り合いがあったようで、シンビンが出たのか(この辺りよく分からなかった。アナウンスもなし)、一人足りない尾道だが、何とかしてトライを挙げようと攻める。しかし、東福岡のディフェンスを破ることも裏に出ることも出来ない。東福岡のペナルティも手伝い、終盤を攻め続けたが、得点には至らずボールが前にこぼれたところで試合終了となった。
ここまでの東福岡を見てきて、この試合に負けることは予想しなかったものの、どういう展開になるかも今ひとつ考え付かなかった。しかし、この日は自由自在、東福岡らしい攻撃を見せて会場を沸かせた。やはり、布巻が先発で出ると攻撃の安定度が全く違う気がする。強さが注目される彼だが、決して無闇に突っ込むのではなく、パスを放すタイミングが素晴らしい。SOの加藤のランも光った。東福岡らしい勝利といえよう。キッカー川原田のプレースキックの確実性もこの日全てのチームで群を抜いていた。
しかし、敗者も、一昨年花園を湧かせた鹿田キャプテンの時を思い出させるような、全力を出し切った尾道の戦いぶりだった。スコアは開いたものの、尾道の気持ちが切れないでいる内は試合への興味が失われることはなかった。
セービングの見事さが目に付いた。イレギュラーのバウンドも、地面に転がったボールも、躊躇いなく体を投げ出してボールを確保するその姿は、尾道がいいチームだということを物語る。試合の後半も半ばを過ぎて、友人が言う。「あのユニフォームが瀬戸内の海に見えてきたな。」私もそう思っていた。坂の多い町並みを降りた海岸にきっといつも打ち寄せているのであろう波の色に。
東福岡が強かったからこそ、挑戦者のひたむきな姿勢が際立つ。得点の差は確かに開いたが、私は観客として最後まで試合への興味が失われることはなかった。高校ラグビーらしい、いい試合だったと思う。
これで、今までで最も多くのチームが参加した春の選抜大会も、残っているのは四校となった。
天候もスタンドに座っている分には穏やか、もう移動しなくてもいい準々決勝まできてやっとゆっくり眺める余裕が出てくる。常翔のフロントローの体格を改めて確認すると、1番山内君、180㎝・90㎏、2番勝木君、172cmだけど102㎏、3番の西池君はなんと!185㎝140㎏である。
失礼しました。
これこそ「大きく育てましょう」の筆頭に来るべきか。見落としとは恐ろしい。
そして、それを見ている際に気づいたのである。仰星は、プログラムによると5番中村君が190㎝、19番泉森君が193㎝(しかも、プログラムに拠れば、110㎏)であることに。これに準々決勝になるまで気づかないまま前回の記事を書いてしまい、反省している。
せめて、準々決勝で気づけてよかった。
第一試合 常翔学園ー大分舞鶴
勝敗は一瞬にして決していた。
試合の幕を開けた常翔のノーホイッスルトライは、特別なことは何もせずに、FWでポイントを作りボールを回した結果あっさりとスペースが空きインゴールを陥れたものであったことが、力の差を歴然と示していた。その後も、奔流のような常翔の攻撃に押し流される大分舞鶴フィフティーン。防御において全く覇気が見られず、ラックを連取されるとあっという間に人数が足りなくなり、タックルに、一応いっているのに振り解かれてはあっさりトライを献上する。高く、どこか腰の引けたタックルである。
3分、12分、16分、21分と常翔がトライを重ね、29-0まで点差が開く。終了間際29分、大分舞鶴は常翔のペナルティを起点に何とかFWで取りきり辛うじて5点を返し、5-29としたところで前半終了。
後半、またもや常翔がノーホイッスルトライを挙げて突き放しにかかる。4分、大分舞鶴はFWで近場を攻めてトライ、ゴールも決まり何とか10-34とするが、7分、12分と常翔が自在に走り、止めを刺す。46-12。
更に常翔の攻撃は続く。しかし、相手のタックルの甘さに味を占めたのか、「そこできちんとパスを放ればトライになる」というところで個々の選手が勝手に突っ込むようになる。当然試合は停滞、ラックに巻き込まれた選手は孤立しがちなので、ターンオーバーを許したりノットリリースの反則を犯すことになる。トライチャンスは何度も訪れたが悉く潰れた。得点が動かないまま時間が過ぎる。
24分、漸く常翔がトライを挙げ、53-12。残り時間は少ない。大分舞鶴が相手キックをキャッチしたところから攻め込み、大きなチャンスを迎えたが、パスが悪すぎて通らず、ターンオーバー。結局そこからカウンターで常翔が攻め上がり駄目押しのトライを挙げ、61-12で試合は終了した。
正直なところ、大分舞鶴は予選リーグの組み合わせに恵まれてこの場に立ったように見えていた。予想通りの試合展開に、納得と失望が半々。残念ながら「情けない敗戦」としか言えない。
常翔は、予選リーグよりも伸び伸びと戦っているように見え、FWの接点の強さも、BK個々の速さも見せてくれたのだが、後半中盤一気に試合運びが雑になったのはいただけない。見ている立場としては「その程度のチームでしかないのか」と思ってしまう。覇を唱えるつもりのチームであるなら、もう少し違った戦いを見せてほしかったというのが本音だ。残念だった。10本中成功が4本というコンバージョンの成功率の低さも気になった。
FW陣は激しくファイとしていたが、目立っていたのは15番の中林選手。スピードと強さを兼ね備え、積極的に突っ込んでいく非常に強気なタイプ。魅力的にも見えるが、相手のディフェンスを破れない時どうするかを考えると評価は難しいタイプかもしれない。
第二試合 御所実業ー桐蔭学園
準々決勝の中で最も力の近接したカードである。そのことを当事者も観客も理解しているからだろうか、試合前にはかなり強い緊張感が漂った。試合が始まってもそれは続いた。御所が攻めれば桐蔭が激しいタックルを見舞う。桐蔭がスクラムをターンオーバーし攻めれば、御所はタックラーだけでなく二人目三人目が一気に群がり防御し、簡単にはゲインを許さない。
桐蔭は二度目のスクラムターンオーバーから相手ゴール前に攻め込んだところで御所がオフサイドを犯す。ここで、桐蔭はスクラムを選択するが、球が出たところでノックオン。
それでも相手キックをキャッチしたところから再び攻める桐蔭だったが、ゴール前で10の短いノールックパスを御所が見事にインターセプト(はっきり見えなかったが10か?)、受けた7はゲインしながら捉まる寸前キック、一気に御所が攻勢となる。20分、相手キックをキャッチしたところから御所15が走りこむ。タックルに行こうとする桐蔭の選手同士が交錯してしまい、穴が開いたところで受けた12がトライを決め、5-0とする。
キックオフ後、再び攻め込む桐蔭だったが、ゴールを目前にしてノットリリースザボールで逸機。終了間際、御所はPGを狙うが外れ、5-0で前半を折り返した。
後半、桐蔭10のパスを御所4(か?)が再びインターセプト、一気にゲインし受けた13がトライ。ゴールは決まらず10-0となる。ノーホイッスルトライである。出鼻を挫かれた桐蔭は完全に波に乗り遅れる。
個人的に、この両者は雰囲気が似ているチームだと感じていた。活き活きとディフェンスをし、ディフェンスからリズムを作る。だから、攻めさせられ、しかも取り切れないとペースが乱れる。この日、攻めさせられたのは桐蔭の方で、その分点差はそれほど開かなくとも、試合の主導権を握っているのは御所であるように見えた。
御所は、攻めてもラックで二人、三人と固まって後ろから素早くサポート。ボールをしっかりキープしながら時間、陣地を有効に使う。ラックの先頭で低く構え、前を見据える選手たちの姿は一昨年の長崎北陽台を思わせ、何となく胸が熱くなる。
桐蔭はチャージを起点に御所ゴール前に攻め込む。御所がペナルティ、ラインアウトからギャップを突いて6が抜けてトライ、ゴールも決まり、何とか7-10の3点差に持ち込む。残り時間は10分を切っている。
桐蔭が攻める。しかし、ミスやペナルティでどうしてもトライには結びつかない。ロスタイムはやや長い4分、桐蔭ボールのスクラムからボールが出たところで、ここまで破綻しなかった御所のBKのラインディフェンスに穴が開いた。突っ込めばチャンスだったが桐蔭は前に出たディフェンスに対して下がってしまい、ギャップを突くことは出来ず、チャンスは潰えた。時間切れで、御所が逃げ切った。
桐蔭も決して大きいチームではないと思うのだが、今年も御所は本当に小さい。しかし、足腰は御所の方が強いのではないかと見ていて感じた。やはり小さいチームがするべきことをきちんとしているのだ。
ちょっと聞いた話によると、今年の御所は高校でラグビーを始めた選手が多く、CTBのどちらかの選手もそうだとのことだったが、どちらだったとしても、二人ともとてもそうとは思えないほど素晴らしいタックルを連発、あのタックルだけでこの一日の元はとれたように思う。去年の選抜、花園、そしてこの選抜と、大きな舞台を連続して踏むことでチームとしての蓄積も一気に全国上位レベルのものへと変わってきているのだろう。しかし、天理との差が開いているというわけでは無さそうだから、今年も奈良県の争いは面白いのではないだろうか。
関東王者には残ってほしいと願っていたが、激しいディフェンスの前に桐蔭は敗れ去った。もしかしたら、関東大会でうまく行き過ぎたのかもしれない。予選リーグでも競った試合がなかったために力が伸び切れなかった部分もあるのだろうか。守備はともかく、攻撃においてミスが多すぎた。どこで勝負したいのかが見えてこず、インターセプトを許すなど隙も多かった。チームはこの経験をどう消化するのだろうか。
第三試合 東海大仰星ー長崎南山
「啓光を倒した」という看板を背負うことになった南山が、近畿3位の仰星にどう戦うことが出来るのか。この試合を非常に楽しみにしていた観客は多いだろうし、私もその一人だった。
開始2分、仰星はラックでのターンオーバーから、SOがギャップをついて抜けてトライ。ゴールは失敗したが、呆気ない先制トライで、スタンドに僅かに白けた空気が漂う。ターンオーバーからとはいえ、あっさりと取られすぎではないかという思いが萌すのだ。
仰星は勢いよく前に出続け、4分、再びターンオーバーからトライを挙げる。
差し込まれながらも南山が少しずつ自分のペースを取り戻そうとする。粘り強くタックルし、接点でのターンオーバーなども出てくるのだが、いざボールを持ったところでミスが頻発し、流れを摑むことが出来ない。13分、16分と仰星が再びトライを追加、24-0まで差は広がる。
「全国大会で勝たなければならない」という重圧の下、仰星はもっとぎこちない攻撃を見せるかと予想していたが、力を素直に出すことが出来ている印象を受ける。とにかく仰星が攻撃でも防御でも前へスピードに乗って出て行き続ける。辛うじて防ぐ南山。
26分、仰星のダイレクトタッチからのラインアウトで漸く仰星陣22mまで入った長崎南山は、ラインアウトから素早くBKに展開。抜け出した10が12につないでトライを挙げる。ゴールも決まり、7-24として何とか後半に一縷の望みをつないだ。
後半、開始早々、南山が何とか流れを手繰り寄せようと立ち向かうが、3分、南山のキックをキャッチしたところから仰星14が自陣10m付近から一気に走り切りトライを奪う。仰星の勢いは衰えない。接点での激しさで南山を上回り、圧力を受けた南山はハンドリングミスを多発。ボールを手に入れ攻めようとしても、ミスやペナルティで結局手放すことになる。12分、19分に仰星がトライ。このキックオフから仰星が更に1トライを重ねた場面は、南山がもうディフェンスに行けなかった。50-7。この後、南山はキックパスで14がトライを挙げ、14-50とするものの、32分、仰星が55-14と止めを刺し、試合は終わった。
この日、南山は堅守が機能しなかった。スクラム、ラックなどから仰星SOがボールを持ったところから一気にトライを奪われる場面が繰り返され、試合中に修正されることはなかった。チャンネル1のところのディフェンスを受け持つ存在がおらずSOに自在なゲインを許していた。ラックでしばしばターンオーバーを果たせるのだが、それがトライへ結びつくまでには道程が遠すぎた。仰星と自分たちの力関係をどのように計り、どう戦うつもりだったのか、それが実行できなかったのはどうしてなのか、ちょっと聞いてみたいようにも思う。もう少し接線になるかと思ったのに残念だ。
仰星は非常に勢いがあった。ボールを持ったら素早く展開、ペナルティからでも素早く仕掛けて相手に構える余裕を与えなかった。これがどんな相手にも出来るようなら楽しみなチームだと感じた。
10の水野が目立っていたが、13、14の畑中ツインズもかなり活躍。横山ツインズに続いてラグビー界を沸かせられるか楽しみである。
ちなみにこの日の仰星のLOは冒頭に述べた190㎝ツインタワー。羨ましい(←誰の視点?!)。
第四試合 東福岡ー尾道
東福岡のキックでゲームは始まった。
激しくタックル、ラックでターンオーバー、そして10の効果的なキックで尾道が敵陣に入る。6分、ペナルティをもらったところでPGを選択、これを10が決め3-0と尾道が先制を果たした。
東福岡は攻め込む。尾道は、ボールを得た時にミスが出て攻勢には移れないが、接点、ディフェンスでは全力で抵抗し、何とか防御し続ける。東福岡が遂にゴールを割ったのは17分、ラインアウトから展開したボールを受けた12がディフェンスを突き破ってのトライだった。東福岡は、20分、PGで3点を追加。更に23分、尾道のペナルティからラインアウトを起点にトライを奪う。26分にも1トライを追加し、24-3として前半終了。
後半、尾道も素晴らしいタックルを見せるのだがそれでも攻め続ける東福岡は7分、10がラックから出たボールを受け走り切りトライ。
相手キックを受ければボールを持つ機会はくるのだが、速いプレッシャーを受け、前半は五分に渡り合っていた接点でも体力が奪われてくる後半にはターンオーバーを許すようになると、攻めても攻めても得点が取り切れないという状況に陥る尾道である。13分、ターンオーバーから東福岡はトライを追加、更に、この後何とか東福岡ゴール前に迫った尾道の攻撃をしのぎきると、ターンオーバーから一気に3がゲイン、これが起点となって20分にはまたトライに結びつく。41-3。
この時インゴールで小競り合いがあったようで、シンビンが出たのか(この辺りよく分からなかった。アナウンスもなし)、一人足りない尾道だが、何とかしてトライを挙げようと攻める。しかし、東福岡のディフェンスを破ることも裏に出ることも出来ない。東福岡のペナルティも手伝い、終盤を攻め続けたが、得点には至らずボールが前にこぼれたところで試合終了となった。
ここまでの東福岡を見てきて、この試合に負けることは予想しなかったものの、どういう展開になるかも今ひとつ考え付かなかった。しかし、この日は自由自在、東福岡らしい攻撃を見せて会場を沸かせた。やはり、布巻が先発で出ると攻撃の安定度が全く違う気がする。強さが注目される彼だが、決して無闇に突っ込むのではなく、パスを放すタイミングが素晴らしい。SOの加藤のランも光った。東福岡らしい勝利といえよう。キッカー川原田のプレースキックの確実性もこの日全てのチームで群を抜いていた。
しかし、敗者も、一昨年花園を湧かせた鹿田キャプテンの時を思い出させるような、全力を出し切った尾道の戦いぶりだった。スコアは開いたものの、尾道の気持ちが切れないでいる内は試合への興味が失われることはなかった。
セービングの見事さが目に付いた。イレギュラーのバウンドも、地面に転がったボールも、躊躇いなく体を投げ出してボールを確保するその姿は、尾道がいいチームだということを物語る。試合の後半も半ばを過ぎて、友人が言う。「あのユニフォームが瀬戸内の海に見えてきたな。」私もそう思っていた。坂の多い町並みを降りた海岸にきっといつも打ち寄せているのであろう波の色に。
東福岡が強かったからこそ、挑戦者のひたむきな姿勢が際立つ。得点の差は確かに開いたが、私は観客として最後まで試合への興味が失われることはなかった。高校ラグビーらしい、いい試合だったと思う。
これで、今までで最も多くのチームが参加した春の選抜大会も、残っているのは四校となった。
by kefurug
| 2009-04-05 22:08
| 観戦記(高校)