<   2007年 04月 ( 3 )   > この月の画像一覧

その背中

 密集からSHが出した球を受け取り、少し傾いだ背中でサイドに切り込む、九州電力背番号10。
 パスだ!と相手にまんまと思わせるダミーとステップでディフェンスを抜き去り、静かに鮮やかにゴールラインに飛び込む、大東文化大学背番号10。
 関東学院NO8の突進を、足にしがみ付き止める。密集の一番下から起き上がる法政大学背番号10。

 どのポジションの選手も魅力的なのだが、司令塔の背中というのは何故こうも雄弁なのだろう。

 最近、ふとした時にいつも浮かぶ背中。背番号10、小樋山樹。関西学院高等部ラグビー部キャプテン。体は本当に小さい、公称169センチ。その背中が、曇り空の下で、晴れた日の光の中、いつでも人を惹きつける光を放つ。ボールを持てば、うまくラインの裏へ、あるいは自らに引き付けてセンターへとパス。彼にスペースが与えられればチームの攻撃は自由自在だ。相手チームはアタックラインのスピードについて来られない。

 もっと強いチームはたくさんあったし、強いだけでなくうまいチーム、見事な作戦、試合振りもたくさん見た。しかし、選抜が終わってみて、自分がいつも思い出しているのはあの背番号10の背中。小さいのに華のある背中。

仙台育英戦。前半FWが文字通り粉砕される。仙台8リチャードがシンビンの間ですら得点できない。前半0-22。
 後半、息を吹き返した関西学院はディフェンスが機能し始める。14分、17分と小樋山を起点にFWの頑張りもあり、続けざまにトライを決める。コンバージョンも小樋山が決め14-22。しかしここからは仙台がきっちりディフェンス。関西学院はボールを持ってもラインの後ろに出られない。小樋山インゴールキックを絶妙の位置に蹴りこむも、追いつけず。22分、26分と仙台がトライを重ねる。14-32。
 それでも関西学院は攻める。10が、12が切れ込む。でも抜けない。終了間際、ボールをキープした関西学院が 10メートルラインと22メートルラインの中間あたり、左にラインを作り、9→10と回したところで小樋山、痛恨のノックオン。そこから仙台は攻め込み最後はモールを押し込んでトライ。コンバージョンは外れ、14-37。フルタイム。

 小さいチームが普通に負けただけ。いくらアタックにオプションがいっぱいあってもFWが敵わなければ出せないし、相手がどんなに大きくてもそれを止めなければ勝てない。それは紛れも無い真実。だからこそ、私は少し夢見ている。華のある背中が、今度はどんなに大きな相手に包み込まれようとその中からするりと姿を現し、見事にゴールラインを陥れるのを。
[PR]
by kefurug | 2007-04-27 02:05 | 高校ラグビー
  見事に戦っていた。タックル、ジャッカル、ラインとパスで抜こうとするアタック。全てが「このチームが強い相手に勝利しようとするにはこれしかない」という松山さんの意志の元に選手たちが身につけ、磨き上げてきたもの。これが松山さんが作りたかったチームであり、それについてきた選手たちが到達したところなんだ、と、彼らの一年間を思うだけで胸が熱くなった。

 相手の東海大相模は体の大きさや、ボールを持ったときのスピードが根本的に違う。ラックを作ろうとしても、相手FWのものすごい勢いのラッシュでボールをキープできない。相手バックスがゴールラインに迫っても決して諦めずにタックル、またタックルで必死の防御をするが、それでもその間に相手フォローが来てしまう。アタックでも、一つ一つ素晴らしいプレーが随所に飛び出す(センターのノールックパスや、パスのタイミングなどが絶品。伝統工芸の香りを感じる)のだが、それでもゴールラインに迫れない。まるで壁に押し包まれているかのようだ。スコアは0-78。ただの大敗だ。普通に見れば。

 自分の方が明らかに劣っている部分が多い場合、それでもどう勝つか、ということにはかなりの戦略とそれに沿ったプレーを選手が体に刻み付ける必要がある。その上で相手の弱点を突くことが出来るような、自分たちの強みを生かせるような、そんなプレーが出来れば勝利が自分たちのもとに、訪れてくれる可能性は高くなる。そういう経験を若いうちにすることが出来れば、人間は残りの人生をどれだけ豊かに強く生きていけるだろうか。
 そのような志を見たいと勝手な期待をして、いつも高校生の試合に足を運ぶ。しかし、準決勝ぐらいで、このチームが対抗馬かな、と目星をつけているチームに、がっかりしてしまうことが多い。 決勝で当たる2チームがそれぞれの試合で同じ戦い方をしている。ならば決勝は単純に力の勝っている方が勝ってしまいはしまいか。
 だからいつも不完全燃焼だなあと感じていた。選手たちが体力・気力としての全力を出したとしても、それはチームとして、言い換えればその「ラグビーのクラブ」としての全力は出し切れていない。大人の叡智が加わっていないからだ。それは、チームに決定的な信念が欠けている可能性も意味する。それでは、本当のところで、出し切れない。そういう敗戦を見ると、選手たちの頑張りに心を打たれはしても、出し切ってないなあ、出し切ったらどういう試合になるんだろう、という心残りが消えなかった。

 柏陽高校は、明らかに今出来ることは出し切っていた。出し切っても、それでも単純に届かない。それは残酷な事実だ。
 でも、本当に打ち砕かれたからこそ進むことの出来る明日がある。
 大抵の普通の敗戦にはエクスキューズが存在する。元々戦力が違うよ、練習量が違うよ、練習環境が違うよ、うちはちゃんとしたコーチがいないし…。仕方ないと諦めてしまえるから、敗戦から学ばないで済んでしまい、悔しさも薄めることが出来る。そこから何も変わらない。
 この日、柏陽は怪我人と体調不良で実質は11人での戦いだったと後で知る。だが試合中、チームはエクスキューズの存在を一切感じさせなかった。完全に、負けた。おそらく、本当に戦った者だけが、本当に負けることが出来るのだろう。

  
[PR]
by kefurug | 2007-04-23 22:17 | 高校ラグビー

 選抜 準々決勝

 やっと晴れた熊谷ラグビー場。やっぱりこの場には光が似合う。
 第一試合 桐蔭22-14東海大仰星

 力は、実は互角というよりも仰星の方が上なのかな、と思わなくもない。ここぞという時のディフェンスの出足の早さや強さは仰星の方が目立つ。逆に桐蔭は、ディフェンスに意識をおいているのは分かるのだが、前で止めるというよりも少し差し込ませながら止める、というか、少しずつ相手が前に倒れ掛かってくる感じで少し押し戻される。そのディフェンスの癖のせいで今ひとつ見ているものが迫力を感じにくい気がする。関東だとこれでも圧倒的に強い。ただ、花園でも見たとおり、本当にそこを突破してくるチームには、ゲインを切られてしまう…。
 それでも今日桐蔭が勝利したのは、やはり勝利への意志が以上に強かったからだろう。先制トライの早かったこと(私はまだ駐車場にいた)!開始10分にして2トライを先制。先手を取ることがうまくいったので、その後も慌てずに試合を運んでいた。対して仰星はなんとなく気持ちが空回りしている印象。去年の選抜の啓光にも感じたが、自分たちの影に自分たちでおびえている感じ。ライバルは去年のチーム…というやつ。やっぱりあれだけ強いチームの後は嫌だろうな、と少し思う。山中君の後にスタンドオフとかやりたくないもん。
 3月31日に桐蔭グラウンドで両者はAチーム以外中学校まで含めて練習試合を行っている。スコアは記されていなかったが結果だけ見ると仰星の勝ち数が圧倒的。肝心のAチームだけが敗北、という皮肉な結果になった。

 第二試合 東福岡31-15天理

 第三試合の伏見工業と合わせて、どうもこの近畿一位二位は駄目じゃないかと危惧していたのだが、危惧で済んでよかった。天気のせいだったのかも(近畿大会決勝も非常に悪天候)。
 天理は徹底的にノータッチを蹴り、東FB竹下君に取らせて止める作戦、対して、東福岡は、去年のスタイルを踏襲するつもりらしく、人と人の隙間をこじ開けてすり抜ける。だから蹴らない。
なんとなく去年の呪縛があるので、これをやられるとあっさり抜けるんじゃないか?(仰星以外のチームは)、と思ってしまうが、さすがに天理。ディフェンスが前に出だすと、なかなか抜けない。しかもモールも健闘。東にあまり押させない。それでも東福岡は回す。パスミスがあって相手にトライを献上した後でも回す。自陣ゴール前、ほぼゴールライン上か?ぐらいの位置でも、蹴らない。確かに風下だけど…。それで成功したのもあるけど…。前半は不思議な拮抗の仕方だった。もちろん、天理のディフェンスはいいのだが、東福岡は基本的にこう、クラッシュしない、という発想があまりないっぽく、外側に激余りの状態でもボールキャリアがラックを作ってしまう。あのアジリティにして本気で展開ラグビーをやったらそれこそ触らせないでトライが取れるのに!!伏見工業とは違う概念の展開ラグビーが生まれそうなのに。新しい次元に行けるのに…(ピリオドの向こう?)。勿体なくて悔しい。またラグビークリニックの谷崎監督の記事を読んで考えよう。
 後半も、20分くらいまでは拮抗していたのだが(相変わらず回す…)、最後東福岡が振り切って勝利。最後、天理キャプテンの立川君はもう走れない状態に(それでも最後の最後まで肝心なところでは頑張ってたなあ)。少しだけ、彼が万全だったら分からなかったかな、と思った。二年前一年生スタンドオフとして花園に出て以来、成長したのではないか。ついでに、二回戦で一点差に泣いた春日が丘、強かったんだなあ。
 
  明日の東福岡VS桐蔭は、東の展開力と桐蔭のディフェンス力のどちらが勝るか、に尽きると思う。これで桐蔭が勝つようなことになると、桐蔭は明らかに新しいステージに(ピリオドの向こう?←しつこい)。対して、今回こそ優勝して欲しい気がする東福岡。展開…が鍵だと思うんだけどな。

 第三試合 伏見工43-7久我山

 正直、万が一久我山に伏見が負けるようなことがあったらどうしようか、と思っていたのだ。別に関東の人なのだから関東を素直に応援すればいいのだが、やはり伏見工業のラグビーは心の故郷(なんのこっちゃ)。負けてほしくない。なんとなく…。
 近畿大会を、啓光、仰星、天理と撃破して優勝。というのを見ればものすごく期待するわけだが、二回戦は茗渓相手にぴりっとしない試合運び。でも、前の試合で天理もブレイク(なんとなく)。ということはきっと伏見も…
 という期待の通り、来た!!前に出るSO!敵のぎりぎり(文字ほどじゃないけど)で抛るからセンターが裏に出て自動的に余ってく。うまく書けません。見事な伏見劇場。この間、ある場所である監督がこのSOを酷評していたが、今日はよかった。センターコンビが生き生きと駆けていて。
 こういうチームは他にないから、久我山は「後ろに戻れ」ない。関東のチームでこういうのありえないから…。ある方が「久我山は東京ではダントツなんだから、全国を見据えたチーム作りをしてしまえばいいんですよ」(ちょっとニュアンスが違うか)と仰ったが、本当にそう思う。接点だけなら久我山のほうが強そうだ。でも、強さと勢い、という感じで、応用がない…のかも。生徒たちはまじめそうだから可哀想だ。
 それはともかく、伏見らしいものを見られた、と思う。明日、明後日(育英には勝ってほしい。是が非でも)も楽しみだ。お日様、晴れて下さい。

 文字が高二、三と二回も選抜で見ているはずなのに、全然印象がない…。その後すごい化けたのか、私の目がついていけなかったのか(多分後者)。あーあ、文字君とは運命の糸がつながってないのかな?(決して赤い糸ではありません)

 ここで力つきたので第四試合はまた別の機会に。
 
 花園の後がないせつなさもいいが、選抜は、悔しさの中に「花園までここからどれくらい伸びるだろう」という期待が、選手自身にも観客にも漂っているのがいい。
 
[PR]
by kefurug | 2007-04-05 22:13 | 高校ラグビー

とりあえず、非常に個人的な思いを書き綴ります。


by kefurug