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その背中

 密集からSHが出した球を受け取り、少し傾いだ背中でサイドに切り込む、九州電力背番号10。
 パスだ!と相手にまんまと思わせるダミーとステップでディフェンスを抜き去り、静かに鮮やかにゴールラインに飛び込む、大東文化大学背番号10。
 関東学院NO8の突進を、足にしがみ付き止める。密集の一番下から起き上がる法政大学背番号10。

 どのポジションの選手も魅力的なのだが、司令塔の背中というのは何故こうも雄弁なのだろう。

 最近、ふとした時にいつも浮かぶ背中。背番号10、小樋山樹。関西学院高等部ラグビー部キャプテン。体は本当に小さい、公称169センチ。その背中が、曇り空の下で、晴れた日の光の中、いつでも人を惹きつける光を放つ。ボールを持てば、うまくラインの裏へ、あるいは自らに引き付けてセンターへとパス。彼にスペースが与えられればチームの攻撃は自由自在だ。相手チームはアタックラインのスピードについて来られない。

 もっと強いチームはたくさんあったし、強いだけでなくうまいチーム、見事な作戦、試合振りもたくさん見た。しかし、選抜が終わってみて、自分がいつも思い出しているのはあの背番号10の背中。小さいのに華のある背中。

仙台育英戦。前半FWが文字通り粉砕される。仙台8リチャードがシンビンの間ですら得点できない。前半0-22。
 後半、息を吹き返した関西学院はディフェンスが機能し始める。14分、17分と小樋山を起点にFWの頑張りもあり、続けざまにトライを決める。コンバージョンも小樋山が決め14-22。しかしここからは仙台がきっちりディフェンス。関西学院はボールを持ってもラインの後ろに出られない。小樋山インゴールキックを絶妙の位置に蹴りこむも、追いつけず。22分、26分と仙台がトライを重ねる。14-32。
 それでも関西学院は攻める。10が、12が切れ込む。でも抜けない。終了間際、ボールをキープした関西学院が 10メートルラインと22メートルラインの中間あたり、左にラインを作り、9→10と回したところで小樋山、痛恨のノックオン。そこから仙台は攻め込み最後はモールを押し込んでトライ。コンバージョンは外れ、14-37。フルタイム。

 小さいチームが普通に負けただけ。いくらアタックにオプションがいっぱいあってもFWが敵わなければ出せないし、相手がどんなに大きくてもそれを止めなければ勝てない。それは紛れも無い真実。だからこそ、私は少し夢見ている。華のある背中が、今度はどんなに大きな相手に包み込まれようとその中からするりと姿を現し、見事にゴールラインを陥れるのを。
by kefurug | 2007-04-27 02:05 | 高校ラグビー

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