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The Pleiades(東福岡@2008 花園)

 悲願であっただろう、初優勝。優勝旗は関門海峡を渡る。



 東福岡はどんなチームか。あなたは説明できますか?
 個々の優れた力で、自陣深くからであってもボールを持った途端にいつでも攻めに転じる。一旦攻めあがったなら、卓越したボディコントロール、思わず呆気に取られる脚力、前のよく見えているHB団のゲームコントロールとがきらめき、間をFW陣の献身的なサポートが埋めて、仕留めるタイミングを逃さない。SOの工藤、WTB14 の正海、FBの竹下、走る軌跡を光で残してみてほしいほどだ。
 美しい星の名を持つキャプテンを先頭に、彼らはどこか違う世界からやってきたのではないか。そう感じるほど彼らのしているラグビーは、私たちが高校生のスポーツというものに抱く概念と違う。違うように見える。一体何が違うのか?
 不安のかけらというものを見る者に与えない。故に、悲壮感は無く、必死さすらもスパイクの下に隠れる。異次元から花園の芝に降り立ったのは、軽やかで楽しげな戦士たち。

 彼らが強いのはおそらく、余計な邪念を持たずにプレーーしているからだ。
 ピンチを迎える。その状況を、「これはピンチだ。」と認識する。しかし、人間というものは、普通はそこで「ここで取られたら嫌だな」とか、「ミスしたらどうしよう。」という感情が付随してしまう。その感情がさまざまなあやを引き起こし、人生を面白くするのではあるが、こと試合においては「まずいな」という感情が生まれてしまうとあまりいい影響を自らに及ぼさない。
 しかし、見ていると東福岡フィフティーンは違う。たとえ窮地に立とうと、その場でやるべきことを淡々とやればいいと理解しているから焦りがない。チャンスも同じだ。変な色気がない。よってミスが少ない。動きたいように動ける。これは、悪いイメージについて考えないようにしようとして出来るものではない。、余計なことを考えなければ「楽しく」ラグビーが出来るということを時間をかけて体に染み込ませてきたチームだからこそ可能なのである。そして、仕込んでもらって勝つ、のではなく、勝つための道筋を自分たちでつけてきたからこその自信だ。大人に与えてもらったものではない。

 もちろん、自分たちを信じ切れるかという点において、個人ごとの多少の濃淡は本来ならあるであろう。しかし、それをむらなく纏め上げ、一人ひとりに芯を通した山下昴大というキャプテンの存在によって、このチームは決勝でも、「信は力なり」を唱え決して諦めない相手を、防ぎ切って勝利したのである。
 
 山下昴大の、自分たちを信じきっている笑顔が本当に美しい。
 初めて勝者として聞くノーサイドの笛、芝の上の選手にもスタンドの部員にとっても、それは福音を告げるものであった。
 
 
 

 おまけ
 圧倒的な攻撃力、個々の力強さのせいで、どうしても「個」の能力に拠って立つチームだという印象は拭えない。そして、それが賛否両論の原因となるような気がする。微妙に…。しかし、東福岡は本当に個のチームなのだろうか?これは実は大きな命題である。ただ、今は一先ずこれを措く。このチームを語るにはまだ時間が必要だ。

 
 書いていることはあくまでも個人的な意見、感想であることをお断りしておきます。
 
by kefurug | 2008-01-17 23:49 | 高校ラグビー

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