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嵌める (大阪府決勝 その2)

 好きなだけ、攻めてこい。  



 俺たちの裏に出られるのなら。
 そう言わんばかりの啓光の防御、やはりこのチームの面目は決して崩れない柔らかな防御にある。


 大阪朝高のキックオフで始まった試合。早々と啓光の先制で幕が開く。4分、ラインアウトから右に展開。10がそのままランで引き付け内に走りこむ12へとボールは渡る。右に流れていたディフェンスの間を抜けトライ。9のゴールも決まり、7-0。
 8分、朝高が取り返す。朝高10が上げたハイパントを12がチェイス、キャッチ。ここを起点に啓光ゴール前のマイボールラインアウトに持ち込み、8が縦を突きラック。受けた3がトライ。こちらもキッカーは9(右からのキック担当)、ゴール決まり7-7とすぐに追いつく。
 このままFW戦に持ち込めれば朝高のペースになるか。しかしキックオフ後、、朝高のハイパントをキャッチしたところから啓光はカウンター。11が二人抜きでブラインドサイドを独走。自陣10m付近から走りきり、トライ。ゴール決まり、14-7とすぐさま取り返す。
 更に、啓光ディフェンスの前に朝高攻め手なくキック。これを啓光がチャージしてキープ、ラックからFWが押し込んでトライ。ゴールも決まり、21-7となる。6分で2トライ。


 啓光のペナルティから啓光陣に攻め込む朝高。ラックを連取し、何とかゴールラインに迫りたいのだが、抜けそうで抜けない。啓光がもう一度ペナルティ。これで何とかゴール前でマイボールラインアウトを得る朝高。しかし、必死でFWが押し込んでも粘り強いディフェンスの前に最後はオーバーザトップ。


 逃れた啓光、タッチで陣地を回復。更にディフェンスからターンオーバーで攻めると相手の反則を誘い、PGのチャンスを得る。10mラインと22mラインの中間とやや距離はあったものの、ほぼ正面のこのキックを9が決め、24-7と大きな3点を追加。24-0。


 後半、啓光のキックオフをキャッチしたところから、取りたい朝高は攻める。しかし、啓光のディフェンスは朝高の力強い攻撃を凌駕する。
 朝高の攻撃はラックからの球出しも早く、FWでラック→BKでライン攻撃と持てる力を尽くして攻めるのだが、どうしてもディフェンスラインを下げ続けることが出来ない。寧ろ攻撃しながら後退していき、蹴るしかない状況におかれ、ボールを失う。焦るから、今度はパスが逸れるようになる。こうなったら啓光の素早さの餌食だ。


 朝高のハイパントを啓光15がキャッチ。一瞬自分で行くかのように横に流れてから、ボールは内に走りこむ11へ。この日再三素晴らしいランを見せる11、またもハーフウエイ辺りから走りきり、トライ。ゴール決まり31-7。後半8分に遂にセーフティリードに逃げ込む。


 この後も、朝高は攻めるのだが、どうしても点に結びつかない。さっきまで敵陣深くにいたはずだったのに、啓光ディフェンスの網にかかり、ノットリリースを犯すと、あっという間に啓光は速攻。もう朝高陣22m内にいる。9がインゴールへ上げたハイパントに11が反応するが、惜しくもグラウンディングはならず。

 
 朝高は攻めさせられる。いや、それは正確ではない。FWでクラッシュ、今年は磨いてきたというBKのラインで勝負。自分たちの強みで真っ向から勝負を挑んでいるのだが、相手はこちらのぶつかる衝撃を全て吸い取るかのように防ぎ続け、決して穴は開かない。ぶつかってくるつぶてを布で包み込んでしまうかのように。思わず、全ては啓光の手の内で朝高が攻め「させられ」ているかのような感覚に見るものは陥る。

 朝高フィフティーンは思っていたのではないだろうか。「こんなはずではなかったのだが」。
 啓光がディフェンスからリズムを作るチームであることを改めて思う。
 

 しかし、18分、朝高は、スクラムから期待の一年生BK(180cm、90kgのCTB)の個人技でトライを返す。スクラムから展開、ボールを受けた23は一旦外にステップを切った後内に入り込みディフェンスを力強く交しトライ。解説によると、朝高の監督は「去年の桐蔭の仲宗根君のような選手」と評しているとのこと。確かに力強いランである。
 9のゴールも決まり、14-31。3トライ3ゴール差まではついていないのだが、ささっとトライがとれるチームではないのでまだ苦しい点差。前半最後のPGが効いている。


 攻め続けたい朝高だったがラックでオフサイド。
 啓光が攻める。パスが逸れようと、ラックがうまく作れなかろうとボールをキープ、ディフェンスの朝高がついていけずにオフサイド。ここからのラインアウトで、ボールが後ろに逸れるが9が何とかキャッチ。反応よく飛び込んだ7がトライを決め、啓光が突き放す。ゴールも決まり38-14。残り時間6分足らず。
 ここからも啓光は勢いよく攻め込む。迷いのないランニングラグビーに朝高はディフェンスが間に合わない。啓光のノックオンでボールを得ても、プレッシャーからなのか、朝高がミス。そしてターンオーバー。この終盤に来て啓光の攻撃が止まらない。
 それでも、勢い余ってかミスも出て、追加点を挙げるには至らず(この時点でかなりメンバーが入れ替わっている)。ロスタイム、啓光のノックオンから朝高が攻め込むが(7のゲイン秀逸)、ゴール前5mの啓光のディフェンスは堅かった。朝高ノックオンのアドバンテージから啓光がタッチに蹴り出し、ノーサイド。

 
 
 「僕自身も余裕がなくて、記虎前監督のやり方を追いかけ過ぎて、こちらの型にはめることばかりをしてしまった。その結果、僕もチームもどこか、何だか硬くて暗かった。」
 啓光杉本監督の言葉であるという。
 そうだったのだろうな、と思う。見ているこちらも苦しくなるような戦いもあった。春の選抜では
 ようやく雪が溶けたかに見える。この試合は非常にのびのびとやっているように映るのが印象的。
 堅い防御に、ランとパス、キックを組み合わせて相手に穴を開けるアタック。この試合の相手の朝高が「剛」であるだけに啓光の「柔」が一際強く感じられるような気がするが、同じ「柔」相手であればどういう戦いを見せるのかが気になる。
 個人的にはもう一度御所との戦いが見たい。今ならどうなるのだろう。


 大阪朝高は、強いチームだと思う。しかし、相手が啓光というのは運が悪かった。というより、大阪はやはりちょっと他と違う…。これが関東のどっかなら普通に勝つのかなあと思いながら見ていた。
 大阪三強に勝っての花園出場がまだないという朝高。この悔しさを胸に来年はどう戦うのか。大阪が激戦区である状態は続く。
 
 

 しかし、この試合を見ていると(仰星ー常翔もそうだが)、両チーム低いボールに体を張ってセービング、ハイパントをきっちり競ってキャッチ(とらない場合相手にしっかりプレッシャー、素早いタックル)という「基本」を当たり前のようにやっている。美しかった。某大学どころか、トップイーストのチームなんかにも見てほしいくらい(すっごく久しぶりに見て感じたけど、トップイーストって、大丈夫なんですか…?)。
 体を張るのがラグビー。高校生は張っているなあと改めて実感。いい試合だった。

 ついでに。友人の影響か、長袖ジャージに好感を持ってしまう。啓光は長袖率が高いのもなんだかよかった。


 常翔啓光
 1乾 2東本 ③上野 4伊田 5太田 6宣原 7後藤 8金 9三瀬 10松林 11国定 12森田 13三原 14山下 15猪村


 大阪朝高(画面に出た表示が全て片仮名のため、それにしたがう)
 1リ ジャンソン ②キム ジャン 3パク ヨンス 4キム ソンガン 5パク チョンギ 6キム チフン 7キム ケンソ 8リャン チョルソン 9キム サンオ 10キム スンジ 11リ ヨンサ 12オ ヒョンギ 13カン ギソク 14リ ヨンギュ 15キム テウ
by kefurug | 2008-12-24 22:39 | 花園予選’08

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